Windows10でSage(SageMath)を使う (Bash on Ubuntu on Windows編)

いろいろと試していた結果やっと環境が固まってうまく動くようになったのでその記録として記事を書いてみたいと思います。以降の自分もいろいろな用途でSageを使うことになると思いますし、それ以外の人でこれを使って何かする人(後で解説)もかなり有用だと思います。

 

Sage(SageMath)とは

公式サイトを読んで見るなりWikipediaを調べるなりすればよいと思いますが数学の幅広い処理を扱うソフトウェアで計算機代数などを使用することができます。今現在の主な用途としては数値計算や計算機代数など計算機を使う数学において研究目的で使用されます。この場合ですと数学系の課題研究で担当の教授から紹介されたり代数学の論文でこのような計算方法で行います、という場合にSageのコマンドで紹介されていることがあり以降自分の研究を進めていく上で必要となることが多いようです。

もう一つ面白い使い方としては線形代数や数式処理も行うことができるため高校レベルまでのちょっと複雑な数式について数学の先生が答えから逆算して問題を作成したり、テスト問題を考えたときに解答が正しいかどうかをチェックしたり…という用途に使用できるのではないかと考えています。逆に考えると高校生が横着して数学の宿題についてSageで出した解答をそのまま持って行く、なんてことも考えそうな気もしています。高校生が使うのであれば途中式を書いて計算はしてみたけれど答えを提出する前に確認したい、という用途では使ってよいのでは?と考えていますがどうなのでしょうね。

なお、現在の正式な名称はSageMathと呼ぶようです。インストールするパッケージもsagemathという名前で書かれているようですので気をつけていきましょう。

 

Bash on Ubuntu on Windowsの環境を整備する

Windows10において2016年8月に公開されたAnniversary Updateですが、これの大きな更新の一つとしてBashをWindows環境で利用できるようになった、というものがあります。BashはLinux環境における代表的なシェル(この場合はOSとユーザーをつなぐ役割ととればよい)で、これのおかげで一部のLinuxのプログラムを余計な変換なしにWindows上で扱うことができるようになりました。昔からLinuxとWindowsを併用してきたユーザーから見ればかなりうれしい更新です。今回はこれを使うことにします。

Bash on Ubuntu on Windowsの環境を整備するのはいろいろなサイトで紹介されているので詳しい点はそちらに譲るとして簡単に説明すると作業は以下になります。

  1. 画面左下にあるWindowsのロゴを右クリックしてメニューより[コントロールパネル]を選択。[プログラム]=>[Windowsの機能の有効化または無効化]より[Windows Subsystem for Linux (Beta)]にチェックをして有効化する。(更新により再起動が必要になることもあり)
  2. 設定の[更新とセキュリティ]から[開発者向け]を選択してアプリの受け入れに関して[開発者モード]を選択する。
  3. 画面左下にあるWindowsのロゴを右クリックしてメニューより[コマンドプロンプト]を選択。プロンプト上で
     > bash 

    (先頭の>はプロンプト状態を表すもので実際には入力しない)と入力する。以下開発者のみの機能であることに同意した後Bash上のユーザー名、パスワードを入力して環境構築が行われる。

インストールにはしばらく時間がかかりますのでのんびり待ちましょう。環境の構築が完了するとスタートメニューにBash on Ubuntu on Windowsのショートカットが作成され、そのショートカットで起動すると上記のユーザーでログインした環境から処理が始まる、という状態になります。

ちなみにBash on Ubuntu on WindowsのインストールによってBash上で動くプログラムをgccなどのコンパイラによって作成することもできるのでC言語での簡単なプログラムも作ることができます。こういう目的で環境を構築するのもありかもしれません。

ただし、Bash on Ubuntu on Windowsの環境はWindows本体とは異なり自動では更新されません。そのため環境を構築していろいろなことをやるのであれば定期的にアップデートを確認して環境を更新していく必要が出てきます。環境の更新はインターネットへの接続が確保できている状態で

 $ sudo apt-get update 

というコマンド($はターミナル状態を示すもので実際には入力しない)で行います。また、この環境内ではマシン名の名前解決ということでsudoを使う場合などで変な警告を表示されることがあるので/etc/hostsに自分のマシン名(起動直後の表示では[(ユーザー名)@(マシン名):~$]となっているのでそれを目安に)をviなどで先頭行の127.0.0.1の後ろに書き加えてしまいましょう。

以降はBash on Ubuntu on Windowsを起動した場合はその窓のターミナルはUbuntuのコマンドラインだと思って作業することがある程度可能です。すべてのソフトウェアがあるわけではないのでapt-getで取得できないものはコンパイルがうまくできればなんとかなるかも、というレベルです。そのあたりは自己責任で。

 

XmingでGUIウィンドウが使えるようにする

SageMath本体には直接影響はしないのですがこれが使えるとグラフなどを見せるときに非常に楽になります。特にSageのコマンドライン上から描画命令を発行したときにXmingが正常に動いていればxdg-openコマンドを経由して(内部の関連付けにもよりますが)ImageMagickが呼び出されて最終的にXmingにより画面上にウィンドウが表示されます。これがないとSageからの画像表示を行いたい場合に一度ファイルへ出力した後それをWindows領域から見やすい場所にコピーして画像ビューワを使う、という手順となりかなり面倒になります。ちなみにこれを入れておけばgnuplotも表示できるのでその意味でも数学の授業で扱うことを考えたり…ということもあります。

 

インストールの手順としてはBash on Ubuntu on Windows + XmingによるGUI – Qiitaが詳しいのでそちらを見てもらえばよいですが、簡単に手順を書くと

  1. 公式サイトよりXming-6-9-0-31-setup.exeとXming-fonts-7-7-0-10-setup.exe(記事を書いている時点)をダウンロードしインストール
  2. Xmingを起動する。以下一度シャットダウン処理やXmingを終了させてしまった場合は表示させる処理の前にXmingを起動させること。
  3. 環境変数DISPLAYにXmingのサーバー値を設定する。通常は0.0なので
     $ export DISPLAY=localhost:0.0 

    というコマンドを実行する。必要であれば.bashrcの終端にこの命令を記述しておくと状態が登録されるので楽になる。なお、.bashrcに登録されている場合はウィンドウを開いた後でXmingを起動させてもうまく表示されることがある。サーバー値が間違っていれば失敗するのでそこには注意すること。

となります。ちなみに参考にしたページではxeyesを使ったチェックをやっていますがこちらの場合はこの後SageMathをインストールしてチェックするのでそのタイミングでやってもよいと思います。(うまく表示されない場合の切り分けのために先にテストしてもよい)また、LXDEとVNCを併用してGUI環境を作り出す方法もありますが今回そこまでする必要はないと思いますのでこういう方法を使っていきます。

 

SageMathをインストール

SageMathの場合は本体がPythonで記述されているため今回の場合はほとんどの機能をインストールすることができます。ただ、Ubuntuの公式サイトからパッケージを取得する方法ですとうまくいかない場合があるのでリポジトリから作業を行います。こちらは以下のコマンドを実行することでインストールすることができます。

$ sudo apt-add-repository ppa:aims/sagemath
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install sagemath-upstream-binary

注意点としては容量がかなり大きい(5GB前後ある)のでWindowsの本体ドライブにそれだけの空き容量が必要であること、またかなりのサイズのデータをダウンロードするため時間がかかることです。数時間くらいかかることもありますので気長に待ちましょう。

 

SageMathの初期環境を構築する

インストールが完了すればSageMathを起動させて初期環境を構築します。といっても一度目の起動の場合は勝手に環境を構築してくれるのでそれを待つだけです。つまり、

$ sage

と入力すればOKです。なお、完全なLinux上で動作している訳ではないためSageMathを起動させるたびにRuntimeWarningが出てしまいますがそれは無視しても問題ないと思います。

 

SageMathの画像表示チェック

最後に画像が表示されるかどうかを確認して完了です。適当にグラフをplotしてみればよいわけですが、わかりやすくcircle命令を使います。例えば

 sage> circle((0,0),1)

としてグラフとして中心(0,0)、半径1の円が描かれたグラフが表示されるかどうかを確認します。デフォルトであればおそらくImageMagickが起動してXming経由で画像ファイルを表示します。コマンド実行後しばらくたっても画像が表示されないときはターミナル(SageおよびBash)をいったん終了させて再度起動させてみてください。それでもうまくいかないときはWindows本体を再起動させてXmingを起動させた上でSageMathを起動させて確認してみてください。ここまでやってうまくいかないときはXmingの表示テストにより単体で動作することを確認する必要があると思います。もしかするとeogをインストールしておく必要があるかもしれませんが…。

 

SageMathで数学Ⅰや数学Ⅱにありそうな問題を解いてみる

ここからは遊びです。例えば代数学の問題(数と式など)をやってみます。

Q1. を因数分解せよ。

A1. SageMathで以下のように入力して答えを得る。

sage> a,b,c=var('a b c')
sage> y=a*(b^2+c^2)+b*(c^2+a^2)+c*(a^2+b^2)+2*a*b*c
sage> factor(y)
(a + b)*(a + c)*(b + c)

よって解答は(ちょっと並び替えを行うと)

Q2. を計算せよ。

A2. SageMathで以下のように入力して答えを得る。

sage> y=sqrt(3)/(sqrt(3)-sqrt(2))-sqrt(3)/(sqrt(3)+sqrt(2))
sage> y.simplify_full()
2*sqrt(3)*sqrt(2)

よって解答は(根号の数を整理して)

Q3. 方程式を解け。

A3. SageMathで以下のように入力して答えを得る。

sage> y=x^4+x^3+2^x-4
sage> solve(y,x)
[x == 1, x == -2, x == -I*sqrt(2), x == I*sqrt(2)]

よって解答は(iを虚数単位として)

見事に途中式を無視して解答だけ出してしまったパターンとなってしまいました。これで数学の宿題として先生に提出したらほぼ確実にやり直しですね…。なお、記事を書いているときに書いている当の本人が本当にこんなことができるのだ、と妙な感動を起こして笑ってしまったのはおいておきましょう。

上記では問題を解く方向でやりましたが問題を構築するとき(例えば因数で表された状態の式を展開して問題にする)もexpandなどでかなりうまくできます。なお、根号の状態など一部の処理は(A2のように)必ずしも簡単になるとは限りませんので解答が出た後で整理するなどが必要だったりそもそもその式をうまく表現できない場合がありますのでそこまで期待しない方がよいでしょう。もちろん研究にSageMathを使う場合は普通に必要な処理を使っていってください。

 

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