しかしながら毎度のことですがこの手の話題は話題になるときは話題になるので今回も話に一石を投じてみたいと思います。前回は数学から離れた場所から数学を使っている人間として考えてみましたが、今回は教師に近い目線で学習指導要領を通してこの問題を見たときに何が見えるか?ということで読み解いていきたいと思います。
結論を先に言うと「足し算やかけ算の可換性について式の作り方を教えた直後であれば逆に書いたときに間違いとすることは学習指導要領から見ると間違いとはいえない」ということになるかと思います。これについてちょっと説明をしたいと思います。
足し算やかけ算の式を教えるときにどのように教える、という指針なのか
これを見ていきます。学習指導要領をみてみると順序を逆にしたときにどうするのか?については触れられていません。なので判定する材料がないわけです。
ここで問題になるのは「学習指導要領解説」のほうになります。これは学習指導要領に書かれている内容を大学の教授や小学校の先生などが解釈を加えて説明したもので、ほとんどの学校や教科書会社ではこちらを参考にしてどのように指導するかを決定することになると思います。こちらに書いてある内容を参照してみると逆に書くと間違いとできる根拠が少し見えてきます。まずは学習指導要領解説の算数編を見ながら(私なりにですが)解釈すると
- どの児童も与えられた場面について同じ式を立てられる必要がある(つまり式を逆に立ててしまうと国語としてみたとき場面を構成できなくなるため、間違いとできる)
- 式に直した段階では一般化していないため、数学としては可換な演算だが、一般化について教えるまでは非可換な演算として扱ってもかまわない(計算順序についても同様)
- この段階での「式」とは具体的な場面を想定させるためのものなので場面との不一致が起こった時点で間違いと見なせる
ということで、やはり逆にしたときに間違いとすることを認めているようにも読み取れるのではないか?と考えてしまいます。ちなみに上記の説明の後ですが、ちゃんと足し算の式を構築する例があり、国語的な連動があるため、国語から算数の加法の式を与えようとするなら非可換演算と読み取れても仕方が無いと考えられます。
初めて加法や乗法を学習する段階では国語の意味を算数の式に連動させることを学習指導要領の解説が要求している
つまり初めて学習した段階では数学としての加法や乗法の式ではなく「国語を数式表現にしました」という教え方から入る、ということなのでこのような結論が得られるのではないでしょうか。現場の教師や教科書はこれに従っているとするなら「そう考える人も出てくるだろうしそうなるしかないのかな」という感想となりました。もちろん式の一般化、つまりは場面を表しているのではなくただの計算を行うという段階まで来れば可換性を習うのでその場合においては可換として良い、ということになるのでしょうが・・・。面倒なことですね。
ということは(数学的に見ている場合の)可換性が小学校の算数で保たれないという問題はそれぞれの表し方を行う場合の初めの入り方が言葉などとの関連性を保つ形である以上学習指導要領解説がこの形であればずっと残ってしまうと考えられますね。なかなか奥が深いです。
(注) 本来なら文面を引用するところなのですが引用の記述をするのが面倒だったため省略しました。どう書いてあるか見てみたい人は文部科学省のページから検索して文面を読んでみるといいと思います。